このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

WANIMA 1st Album [Are You Coming?] 2015.11.04 on sale!!

WANIMA 1st Full Album [Are You Coming?] Code:PZCA-76 / Price:2,300yen / Release:2015.11.04

WANIMA 1st Album [Are You Coming?]
  • google
  • tumblr

*Track List // 01. ここから / 02. 夏の面影 / 03. いつもの流れ / 04. Japanese Pride / 05. SLOW / 06. TRACE / 07. 1CHANCE / 08. リベンジ / 09. いいから / 10. Hey yo... / 11. エル / 12. THANX / 13. また逢える日まで

  • Tower Records
  • HMV
  • amazon
  • disk union

WANIMA 1st Album [Are You Coming?] Release Interview

● 今回は他己紹介というものをやってみたいのですが、メンバーそれぞれのパーソナリティーを語り合っていただいてもよろしいでしょうか。

藤原 悪口しか出て来なかったら嫌だな(笑)。えっと、光真くんは優しい心の持ち主ですね。実は心配りのできる人なのかなって。ピリっとした空気のときとかに光真くんの言葉で場が和む場面がたまにあったりするんですよ。普段はあまりしゃべらないんですけど、あえて話したりして。

松本 昔からの付き合いなので解るんですが、こいつはただの天然ですから。無口で、すごく考えているように見えますけど、実は何も考えてない。これだけは言えます(笑)。あとはすごく頑固。

藤原 光真プライドはありますね。一切曲げない、みたいな。

松本 本当に些細なことですけどね。「今ミスったやろ?」「ミスっとらん!」みたいな。

西田 プライドが高いというのは自分でもそう思いますね。負けず嫌い。

松本 要領もあまりよくないです。……おれが光真くんのことを説明しようとすると悪いことしか出てこんね(笑)。インタビューとかでは「二人は同じ気持ちです」って言えますけど、面と向かって光真くんにそうやって言うことはないので。それをフジくんが代弁してくれるっていうのはありますね。おれと光真くんは普段あまり会話しないけど、フジくんを入れて会話をすると成り立つっていう。すごくバランスがいいです。フジくんは2個上ですけど先輩面もしないですし。

松本 フジくんは打ち上げ番長っていうくらい、打ち上げの場ではすごく話が上手なんですよ。

藤原 それで喉をつぶしますから(笑)。

松本 面白いんですよ。それは何でかっていうと、わりと人のことが見えとるんだと思うんですよ。人の空気感とか。

藤原 「ペコっ」って書いておいてください(笑)。

松本 あとは人よりも体格的に蓄えているのに打たれ弱いというところがあります(笑)。

藤原 気にしい、なんですよ。なんであの人はあの時あんなことを言ったんだろう?って、怒りが悲しみに変わっていって。でも寝たら忘れます(笑)。

松本 で、お腹が空いてまた起き上がるという…(笑)。

● では松本さんについて。

藤原 これは気を遣ってるとかじゃなくて、努力家ですね。普段から走ったりすることをずっと継続していますし。妥協もしないですし。ちょっと「違う」と思ったら「やっぱりこうしよう」って変えますからね。それは曲作りとかレコーディングでもそうですし、ライブの進行を考えているときも。

西田 ワガママなんですよ。

藤原 一回、ツアーに出るときに口のピアスを忘れたことがあって。それがどうしてもあきらめきれなくて、でもそれを家に取りに帰ったら間違いなく遅刻するから、高速を下りて買いに行きましたからね。

松本 だって、このピアスがなかったらおれじゃないですもん。お客さんに「あれ、健太さん……?」って思われちゃうやん(笑)。

藤原 それはないでしょう(笑)。

松本 あとはタバコも吸わなければ酒も飲まない、ギャンブルもやらない。ギャンブルは人生だけ!

● おっ!

藤原 やるのはワンチャンだけですね(笑)。

松本 ライブもエッチな事も、やっぱり、究極的には相手を気持ちよくさせたいじゃないですか。で、どうしたら気持ちよくさせられるんだろうと考えたら、「おれはこうしたら気持ちいいと思うんやけど、これ気持ちいい?」みたいな。お客さんを気持ちよくさせたいですしね (笑)。

● ストイックで、エロカッコよくて、あとは、「あきらめない」ということですね。

松本 そうやって教わってきたので。「究極のアンチはあきらめんことや」って。

● テンションの高さに波はあったりしないんですか?

松本 すごいあります。自分のなかではわりと一定なんですけど、どこかにスイッチがあるんですよね。以前、占い師さんにも言われたんですよ。「勘違いされやすい」って。別に自分はそう思ってないのに、そう思っているんじゃないかって思われることがよくあります。素の顔が怖いから、黙ってると怒っているように思われたり。

● 明るいか暗いかといったら?

藤原 明るいですよ。

松本 明るいですけど、本当は暗いんじゃないですか。

● 突き抜けて明るい人というのはやっぱり、何かの裏返しのように思えます。

松本 やっぱ、今まで出会ってきた人のなかで、すごくつらい思いをしてきた人ほど、よく笑ってたんです。そういうのに小さいころから憧れをもっていたんですよね。いつも笑っているのに、後から「あの人は本当はこうだったんだよ」って聞かされたりして。そういう人になりたいなっていうのは常に思ってます。

● それはWANIMAの音楽からもすごく伝わります。

松本 それはすっごくうれしいです。

● それでは西田さんから見た、松本さん像を聞かせてもらってもいいですか。

西田 やっぱり幼なじみでず〜っと一緒におったんで。もし音楽をしていなかったら本当に嫌いなタイプだったと思うんですけど(笑)。やっぱり共通する部分も多いし、友達以上なところはありますね。

● 兄弟?

西田 兄弟はちょっと気持ち悪いですけど、そういうところはあるかもしれないですね。ぼくが思っていることをぼくの代わりにほかの人に言ったりするんですよ。そういうところも含めて共同体というか。

松本 勝手に共同体にすんなよ(笑)。

西田&藤原 アハハハハ。

松本 おれまで暗いと思われるやろ。

西田 まぁでも、ぼく以上にプライドは高いですね。そして、ぼくも頑固ですけど、それ以上に頑固で。たとえば、高校生の時、学校が休みで「今日は何する?」って話になって。ぼくが「カラオケに行きたい」、健太は「海に行きたい」となったら、絶対に海に行きますからね。「海じゃなかったらおれは行かん」みたいな、そういうところはありましたね。

● たとえば、松本さんが口に出して言えないときに西田さんが代弁するということはないんですか?

西田 それはゼロに等しいですね(笑)。

松本 そう言うてくれるとね、ラクなんですけどね。

西田 まぁでも、本当に大切な場面ではぼくも言うときはあります。 こう見えてぼくは肝が据わっているんで、いざというときは言えちゃう人なんですよ。

松本 でも、なんだかんだ言って、昔から光真の周りには人が集まってきますよね。光真の環境を知らない人でも光真のことが気になる、みたいな。しゃべらなくても別に、嫌な空気感は出してないし。なぜかそういうところがあるんですよ。だからそれを研究した時期もあって。なんであいつの周りには人が集まるんだろう?って。

藤原 放っておけない存在なんですよ。

松本 なんかそういうのが出とるんじゃないですかね。匂いというか空気感というか。なんか自然と人が集まっていました。そういうのはいまだにあって。たとえば、光真が今使っているナビゲーターっていうギターはもともと(横山)健さんのものだったんですよ。大阪で健さんが直接渡してくれたんですけど。光真が健さんを「師匠」と言うように、健さんも光真をいっぱいいる弟子のなかの一人だと思ってくれていて。でも、健さんが人にギターを貸すなんて、あまり無いことだと思うので、やっぱり光真に対してすごく期待しているんじゃないかと思います。

● さて、WANIMAはCDのセールスもライブの動員も絶好調で。去年から今年にかけて、うなぎ登りに人気が高まっているわけですが、本人たちはまだまだ満足はしていないということで。現在の目標は?

松本 この間も3人で話していたんですけど、言うてもまだパンク・シーンとかのなかだけじゃないですか。もっとより多くの人に、もっとジャンルレスに、いろんな界隈をかき回したいですね。もうずっと言ってるように、おれと光真の地元はすごく田舎で、環境もよくなくて、でも周りに支えられて。今もチームとして支えられていて。なんかこう、ゼロからでも人と人とのつながりでやっていける、ということを見せたいところはありますね。言うてもおれらはインディーズですから。これからも頼りにする人たちは増えていくと思うんですけど。こんな、おれらみたいな野良犬のようなやつらでもやれるんだよって。

藤原 それが3人に共通する目標ですね。

松本 だから、がっかりさせたくないです。これだけ応援してくれとる人がいっぱいいるわけですから。こんなんで満足はできないです、まだまだです。

● 今回のアルバムの歌詞は過去に視線が向かっていたわけですが、これからたくさん経験を積み重ねて、たとえば40歳になったときに一体どんなことを歌っているのか、というのも楽しみです。

松本 あぁ、そうですね! 40歳あたりだったらひと通り、日本の人口の何割りかはぼくとワンチャンしてると思うんで。エッチな方面はすごく濃厚な歌ができとると思いますよ。みんなが想像もつかないような境地に行ってると思います。おそらく、「300人あたりからは3本生えてきたんだよ」って言い始めると思います(笑)。──まぁ、40になっても変わらぬ温度でやりたいですけどね。音楽が好きっていうのは変わらないと思うんで。音楽に真面目に向き合っていきたいです。

● 音楽性とかはどうなっていくんでしょうね。「ジャンルにこだわりはない」ということですが。

藤原 今も音楽性にはこだわってないですからねぇ……。

● 今はラウドでパンキッシュな感じですけれども。

松本 それも特には意識していないんですよ。

藤原 そういう認識が自分たちにはなくて。

松本 「こういう感じとかどう?」みたいに言われたら、「あぁ、こういうリズムもいいね」みたいなくらいで。何かに寄せていってることはないですね。

藤原 何かをパクろうというのもないですし。

松本 こんなジャンルでも日本語でやってますからね。

● そんななかで「ここはこうじゃないとダメなんだ」とこだわるポイントってなんなんでしょうね。

藤原 それは感覚的なものですよね。

松本 笑いのツボが一緒、みたいなものというか。「ここはこうやったら面白いんやないかな」っていうところがわりと似ているんですよ。

● 「グッとくる」みたいな。

松本 「グッとくる」というのはちゃんと向き合わなければいけない部分で。どれだけ正直に向き合ったか、やと思うんですよ。適当にさらっと作ってもグッとはこないです。「グッとくる」というよりは「面白い」ですね。

藤原 面白いリズムとかは、突発的にやって「あ、今のカッコいいね!」ってなりますけど。「グッとくる」はなかなか出ないらしいです。

● では最後にツアーについて。今回は30本のツアーですね。『Can Not Behaved!!』のリリースツアーは、ファイナルが渋谷TSUTAYA O-WESTでしたが、今回はその約4倍の規模にあたる、お台場のZepp DiverCityですね。これはワンマンですか?

松本 ワンマンはまだ早いと思っているんですよ。もっと後に取っておきたいですね。

● ツアーを楽しみにしているお客さんにコメントをお願いします。

松本 これからは新曲が増えるので、いろいろ新しい感覚で遊べると思います。だから体調管理だけはしっかりして、のど飴を舐めてもらって。たぶん、一緒に歌うというよりは一方的に歌ってもらうことになると思いますので──というのは嘘ですけど、がっかりさせないようにワンチャン狙います!

藤原 いつも遊びに来てくれてありがとうございます。もっと進化したWANIMAが見られると思うので、懲りずに遊びに来てほしいです。「ちょっとWANIMAのライブは危なそうだな」と思っている人も、そんなことはないのでライブに遊びに来てほしいです。

西田 気をつけてライブに来てほしいです。体調管理をバッチリして来てください。

Interview by indies issue 岩崎 一敬
Photo by Yuji Honda

● 今回、過去を題材にした歌詞が多いのは、まずはファーストアルバムとして過去に決着をつけたかったという感じだったんでしょうか。

松本 いや、「過去に決着」というよりは、経験値の中から出てくるものと、あとは引き出しのなかから……今回、自分を見つめながら20曲分くらいの歌詞を作ったんですけど。結局、歌詞も何もない状態でコードをジャ〜ンと鳴らしたときに頭に思い浮かぶのって昔のことが多いんですよね。「あの時はああしておけばよかったな」とか「これからはこうしたいな」というのが歌になっているんだと思います。

● だから今の視点と過去のこと、両方が入っているんですね。吐き出していかないと次に向かえない、という部分もあるんでしょうか。

松本 いや、もう、吐き出せん状態のままでも進まないといけないときがあったんですけど。別に(歌詞を書いたことで)消えてはないんですよね。それも一緒に連れていく、じゃないですけど。別に忘れるわけではないんですよ。……そうですね、自分のなかで決着をつけようとはしているかもしれないですけど。

● 1曲目の「ここから」とラストの「また逢える日まで」はその話を象徴するような歌だと思いますが、どちらも今年作ったものということで。

松本 今年の4月ですね。「ここから」は、1曲目の曲を作ろう、って言って作りました。長い曲じゃなくていいけん、短い曲をやろう、って。闘っている人だったら届くんじゃないかなって思ってます。《ダサいのは今だけだから》という部分は、ずっとそうやって教えられてきたことやし。「究極のアンチは諦めんことや」っていうことも教えてもらったので。やりたくないことをやらなければいけないときとか、人の目が気になるときとかは「ダサいのは今だけだから」と思ってやってきたので。それは今もそう思ってますね。

● 「また逢える日まで」の歌詞も切実ですよね。

松本 今年1年もいろいろなことがありましたからね、個人的なことでいえば。まぁ、みんなそうだと思いますけど。出会いだったり別れだったり、日常では当たり前のようにあることですけど。あとはやっぱり、慣れてくると薄れていくものもあるじゃないですか。最初に経験したときは新鮮に感じても、2回目以降はどうしても新鮮味が薄れたりして。うん、いろいろなことがありましたよ。

● 《全然うまくいかないとんだ世の中 時代にのまれて 痛みにも慣れて 何を捨てまた失えば…? 生きる価値を…》とか、こういうフレーズが今のWANIMAから出てくるのはちょっと意外でもあります。

松本 いや、常にそういうことばっかり思ってますよ。

● 実際、今、こういうふうに感じている人はたくさんいると思います。

松本 そうだと思うんですよ。みんな言わんだけで、本当のことは分かってると思うんですよね。でもなんか、「いやいや、おかしかろ!」ということがないと確認できんかなっていうふうにも最近は思ってきて。やっぱり、こうやって思っていることを音楽にして歌えるのはすごくありがたいですね。

● この歌詞を書いたときは、どんなことを思って、どんなふうに届いてほしいと思っていましたか?

松本 全員で歌えたらいいなって思ったんですよ、このサビの部分は。で、何を歌えばいいかって考えたとき、きれいな言葉よりは普段しゃべっているような温度で、全員でみんなが思っているだろうこと、おれも思っていることを書きたかったです。それでこういう歌詞になりました。

● 口に出すことで痛みが和らいだり気持ちが整理されたりすることってありますしね。

松本 そうですね。何か変わるんじゃないかなっていう。

● それぞれ自分に当てはめて、足下を見つめ直すきっかけになったら。やっぱりWANIMAの歌詞は距離感がちょうどいいですよね。押し付けがましさがなくて。自分のことを歌っているようで、お客さんのことも考えているから共感できる。

松本 そんなにカッコいいことも言ってないですからね。

● 西田さんの思いというのも、もしかしたら反映されているんじゃないかと思いました。

西田 自分の気持ちを直接言ったことはないですけど、たぶん気持ちは一緒なんじゃないかなって思います。

松本 住んでいた街も同じだし、地元に残してきた人たちもお互いに全部知ってるので。そういう人たちの顔は思い出しやすいですよね。一緒に闘ってきたという感じはありますね。

● 藤原さんはいかがですか? 

藤原 (松本)健太が歌詞を書いたら一通り見せてもらえるんですけど、それに対して「いや、ここはこうじゃない?」って思ったことがなくて。ということは、やっぱり気持ちは一緒なんだろうなって思います。

● 藤原さんはWANIMAに加入するまで、たくさんのバンドを経てきたわけですけど。いろいろ思うところもあったんでしょうか。

藤原 そうですね。それまで10バンドくらい経験してきて、本当はもう音楽をやめようと思っていたんですよ。その時にWANIMAに出会って。WANIMAのライブを観て、もう一回バンドをやりたいなって思ったんですよね。

松本 おれの信者ですよ(笑)。

藤原 そういうことにしておいてもらっていいですか(笑)。

松本 共感したってことやろ?

藤原 うん。

松本 ありがとっ!!

● WANIMAのどんなところが響いて、もう一度バンドをやろうと思ったんでしょうか。

藤原 普通にライブを観ていて楽しかったですね。いいバンドだな〜って思いました。それと同時に、このバンドでドラムをたたいてみたいなって思いました。

● たまたま前任のドラマーが辞めるタイミングだったんですか? それとも乗っ取った?

藤原 辞めるタイミングです(笑)。辞めるっていうのを聞いていて、共通の知人から紹介されたんですよ。「暇だったらたたいてみれば?」って。それで偶然ライブを観る機会があったので観たら「スゲエ!」って。自分から「たたかせてくれんですか?」って言いました。

● ここまでの状況を当時は予想していましたか?

藤原 予想してました。

松本 絶対に嘘だ(笑)。

藤原 ハハハハ。いや、テンポは早いですけど、いろんな人に聴かせれば、その分だけ届くとは思ってたんで。こういう感じになるだろうな、とは思っていました。

● WANIMAに入ったことで何か自分のなかで変わった部分ってありますか?

藤原 いろいろ変わりましたね。それまでは個人で動くことが多かったんですけど、WANIMAに入ってからは団結力の大切さを実感しました。以前やっていたバンドは今考えたらみんなバラバラだったなって思います。やっぱりWANIMAは全員の気持ちが同じ方向を向いているんで話が早いですね。

● 以前は「もっとやろうよ」と思っていてもほかのメンバーの足並みが揃わなかった?

藤原 自分もそこに慣れてしまっていたところはあったと思うんですよ。その結果、うまくいかずに解散とか活動休止になって。たぶん解散とか活動休止するバンドって、それなりにうまくいかない理由があると思うんです。でもWANIMAはそういう面では一切妥協しないバンドですね。

● WANIMAはどんな方向を向いているんでしょうか。

藤原 上しか向いてないですね。もっといろんな人に自分たちの音楽を聴かせたい、聴いてほしいっていう。どのバンドもみんなそう思っているかもしれないですけど、それをいざ、どれだけ強く思っているかというのは負けないんじゃないかなって。

● 相当、思ってますか。

松本 いやもう、一生に一度のチャンスだと思ってますよ。ずっと音楽をやりたくてもやれんかったですから。

西田 ぼくもその気持ちだけですね。

松本 それプラス、お客さんが求めてくれてる、一緒に歌えとるというのがすごく、同じ時代に生まれてよかったなって思います。

● 3千年前じゃなくて(笑)。

松本 3千年前でも楽器がないだけで、たぶん同じことをやっとったと思いますけど(笑)。

● 上に上がるために必要なのは思いを強くもつことだけですか。

松本 いや、人と人とのつながりがすごく大切だと思います。特にぼくらはインディーズで。ピザはDIY精神がすごくあって、やっぱり人と人のつながりで、一人ではできんこともできていると思うんですよ。伝染していく、じゃないですけど、しっかり目を見て話して、伝わって、一緒になって、一人が二人にっていうふうに増えていけば、それがすごく力になると思うんですよね。そしてそれが音楽に宿っていくと思うんですよ。それはなんでもそうだと思いますけど。いいフェスやったり、いいライブハウスやったり、そういうのはやっぱり人と人とのつながりやったり、真剣に音楽と向き合っている人がいるからやと思うんですよ。

● 今回の「Japanese Pride」という曲でも、今言われたようなことを歌っていますよね。

松本 はい。

● 合ってます?(笑)

松本 そうですね。でも、どう思いましたか?

● いや、人と人とのつながりを大切にするのが日本人らしさだと……。

松本 そうそう、そうです!

● ちなみにサビの《SHAKE SHAKE Japanese》というフレーズは「フレーフレーニッポン」ということですよね?

松本 ま、そういうこともあるんですけど……。まぁ、「混ぜる」とか「振る」とか、いろんな意味がありますし、そこは自分のなかだけの裏テーマという感じですかね。

● 確かに曲全体としてはいろんな話が混じっていますしね。

藤原 聴き手によってたぶん、受け取り方が違って。そういう曲が多いですね。

松本 おれとしては日本人本来の、っていうことを思ってて。あとは、日本に来た外国人が普通に英語で話しかけてきたことがあって。自分たちが海外に言ったら英語で話すじゃないですか。だから「違うやろ、日本語で質問してよ」みたいな。ちょうどその時、自分の占いが12位で機嫌が悪かったんで、「なんでやねん!」と思っちゃったんですよ。この曲ではそういう皮肉も歌ってます。

● 「SPEAK JAPANESE」みたいな。

松本 あとは、ちょうどそのころ出会った女の子が海外好きのハーフの女の子で、《ヤダニッポンジンキライ… ダッテNOモイエナイ…》って言ったんですよ。いやいや、それも日本人のいいとこやんけ!と思って。イエスとノーの間にはすごくいろんな思いがあるんやと。何を言うとんねん!というのもあったんですよ。そういう思いを歌にしました。あとは自分の願望ですね。《海外に行ってみたい… 野外であんなことしたい…》という部分も聴き手によっていろんな受け取り方ができると思うんですけど、「野外であんな娘としたい…」としなかったのがおれらしいなと。歌詞からはそこまで汲み取ってほしいですね(笑)。

藤原 むっちゃしゃべっとる(笑)。なんで関西弁やねん(笑)

● さっきの過去の話のくだりでは言葉は、少なかったですが(笑)。

松本 それを前提にして聴かれたくないというか。本当に精神的につらい人は「つらい」という言葉も出ないものだとずっと思ってきたし。「頑張れ」ってよく言いますけど、本当に向き合って闘っている人にはそういう言葉はいらないじゃないですか。まぁ、おれ以上に光真がぶっ壊れた家庭だったんで。それを見ていたら、おれよりもっとすごい環境のやつがおるんだから、おれなんかこんなところで甘えてたらダメだ、っていうのがあったんですよね。そういうことをなんとかインタビューでうまく言えたらいいんですけど……。そういうのを面白がってネタにするバンドもいるかもしれないですけど、そういうことは言わなくても伝わると思うんですよ。だからこうやって歌詞にして──ぼくは言霊があると信じてます。

Vol.03 へ続く...
Interview by indies issue 岩崎 一敬
Photo by Yuji Honda

● ついにフルレングスのファースト・アルバムが完成したわけですが。オフィシャルサイトのインタビューで言うべきことではないかもしれないですけど、すごくよかったです。

松本健太 (Vo/B) ありがとうございます! 単純にすごくうれしいです。

● 今回のアルバムは、歌と演奏が一体となって向かってくる感覚がありました。芯が太くなっていて、そして突き抜けている。すごくエネルギッシュですよね。そして歌詞からはナイーブな部分や泥臭さ、エモーショナルな面が強く伝わってきて。WANIMAの全力投球の音楽を受け止めているうち、自分も一緒になって駆け上がっていくような気分を味わいましたよ。

藤原弘樹(Dr/Cho) ありがとうございます。

● あと思ったのは、去年、ミニアルバム『Can Not Behaved!!』でデビューした時は《新しい可能性を提示しているバンド》という印象を強くもったんですが、今回はもう「新しい」とか、ジャンルやスタイルもまったく意識せずに聴いていたんですよね。それはたぶん、WANIMA節がすでに確立されているということだと思うんですけど。で、そこであらためて浮かび上がってきたのが歌の魅力でした。特に小さい音で聴いたときによく分かるんですけど、歌がしっかり届くんですよね。そこはやっぱり、パンク系のバンドにはあまりない部分で。歌のもつ普遍的な力をあらためて思いました。

松本 それは純粋にうれしいです。

● もしWANIMAがただの《キャッチーなお祭りバンド》と思われているんだとしたら、「それは違う」と強く言いたいですね。

松本 はい、そう思われているとしたらすごく悲しいですね。

● 今回のインタビューでは歌詞をはじめ、WANIMAの根底にある部分を掘り下げてうかがえたらと思っています。

松本 よろしくお願いします。

● まず、デビュー作『Can Not Behaved!!』はデモ音源に入っていた曲も半分くらいあったわけですが、今回は?

松本 今回はほぼ新曲です。「THANX」という曲は、まだお客さんが2〜3人のころからやっているんですけど。

● 「THANX」、すごくいい曲ですよね。昔からやっていたんですね。

松本 実は「THANX」のサビの部分(《ありがとうを込めて歌った、この気持ちに嘘は無いと/さよならが教えてくれた 離れるのは距離だけと》はもっと昔──ぼくは高校3年生の時に一人で東京に出てきたんですけど、その前からできていて。自分のなかではすごく古い歌なんです。《離れるのは距離だけと》の《と》の部分は、熊本の語尾に「と」を付ける方言と、「……」みたいな含みがあったりして。だからちょっと照れくさいんですけどね。

藤原 あとは「1CHANCE」もデモCDに入っていた曲ですね。

松本 駆け出しのころに売っていたデモCDにも入っています。「1CHANCE」がWANIMAで初めてエロをやった歌ですね(笑)。あとは「いいから」と「TRACE」が先行シングル「Think That…」に収録されていて。あとは全部新曲です。

● 新曲にはこの1年間で経験したことや感じたことが反映されている?

松本 ここ1年を問わず、今までに経験したことのなかから思ったことを書いていますね。

● 新曲を作るにあたって考えたことって、何かありますか?

松本 3人で音を合わせていて「今のいいやん!」ってなる感覚を基準に、とにかく3人が全員一致でいいと思えるものを。「1曲目はどういうものを作ろうか」とか考えたところもありましたけど、とにかく3人が大好きな歌が揃った感じですね。ずっと聴けるアルバムができました。

● 本当、3人が一丸となった感覚が強く出ていると思いました。そこは意識的に重きを置いているんですね。

松本 おれと(西田)光真は保育園からずっと一緒で、フジくんは知り合ってもうすぐ3年になりますけど。特にツアー中とかは常に一緒にいるので、チームでやっている感はすごくあります。

藤原 どんどん密になっている感じがしますね。

西田光真 (G/Cho) 団結力はありますね。みんなの意識が一致している感じがすごくあります。

● WANIMAは常にライブをやっているような印象がありますよね。

松本 全部が同時進行な気がしますね。ライブもレコーディングもワンチャンも(笑)……。

藤原 曲作りも。

松本 「Think That…」のツアーは1ヵ月で12本のライブをやったんですけど、宮崎の1箇所だけソールドしなかったことが悔しくて……。あと20枚だったんですよね。

● 地元の熊本に近いのに。

藤原 初めて行った場所だったんですよ。

松本 でも、初めて行った土地でも毎回、すごくお客さんが求めている感じが伝わってきて。それはおれたちのキャラだけじゃなく、曲ですよね。みんな、おれらの曲を聴いて来てくれていて。関係者から「今日も大合唱だったね、みんな歌ってたよ」ってよく言われるんですけど、それって、それだけCDを聴き込んだ上で来てくれているということじゃないですか。すごくありがたいですし、うれしかったですね。だからその分、いろいろな責任も生まれましたし。

藤原 そうですね。

松本 だから、いろいろ同時進行で、振り返る間もなくやってきたんですけど、そういうことがあったので苦しいとかは一切なかったです。自分は音楽をやりたくて東京に出てきたわけだし、音楽をやれていることがすごくうれしいです。

● しかし、藤原さんと出会ってから約3年、CDデビューしてから1年。展開が早いですよね。

藤原 早かったですね。ありがたいです。

松本 それまでやれんかった時期がすごく長かったので。そのやれんかった期間があったからだと思うんですよ。やっぱり、歌詞もそうですけど、苦しいこととか悲しいこと、どうしようもないことを経験した人ほど、やと思うんですよ。そういう経験を乗り越えてきた人たちほど、本当の意味で笑えていると思うんですよ。そこを信じている部分があるので、諦めずにやってきてよかったなって思います。

● 最初にも言いましたけど、確かに「キャッチー」で「お祭りバンド」という側面もあるかもしれないけど、それ以上に下地の部分にナイーブさと泥臭さがあって。その下地の部分をもとに、ブチ上がっていこうよ、ということだと思うんですよね。だからこそ説得力をもって響くわけで。そういうことですよね。

松本 はい。

● ちなみに、今年の夏に何度か海に行ったなかで、よくかかっていたBGMが関ジャニ∞の「前向きスクリーム」とBRADIOの「スパイシーマドンナ」の2曲だったんですよ。《前向き前向き》ってポジティブを推す曲と、《君のBomb! Cute! Bomb!で遊ばせて》っていう、ちょっとエロいパーティーソング。世の中ではこういう曲が求められているのかなって思いながらも、ぼくにはちょっと分かりやすすぎて物足りなかった。その二つの要素はWANIMAにもありますよね。

松本 逆に、あっちの方がおれらを真似しとるんやないかな(笑)。

● 「1CHANCE」は以前からやっている曲ですしね(笑)。

松本 そうですよ、おれらの方が先にエロをやってるんですよ(笑)。

● 一緒にしているつもりはないですけど、WANIMAの方がやっぱり響きます。

松本 エロに関しては、真面目ばかりだと疲れちゃいますし、やっぱりどこかに逃げ場がないと。エロがはけ口だとは言わないですけど(笑)、おれらはエロカッコイイ音楽が好きだったので。海外のR&BのPVとか、セクシーでエロカッコイイじゃないですか。

● 今回のアルバムに入れたということは、これからも歌っていきたいと。

松本 はい。《迷いなら捨てて 後腐れ無しで!!》って、今でもそう思っていますから。

● 実はエロだけではない曲だったという。それで、「ポジティブになろうよ」みたいな歌は、WANIMAはどんな意識でやっているんでしょうか。

松本 「ポジティブになろうよ」っていう感じでもないんですよね。

● 押し付けがましくは言ってないですよね。自分自身の思いを歌っているだけであって。

松本 うん。「これこれこうなんだよ」って言わなくても、たぶんみんな分かってると思うんですよね。大人も子供も感覚として分かっている気がするんですよ。だけど何とかして乗り越えたいとか。乗り越えていかないと、もうどうしようもないとか、絶対にあると思うので。自分にもあるので。そういうのが音になってると思うんですよね。それが本来の音楽の姿というか。さかのぼること3千年前の話になるんですけど。

藤原 「さかのぼること3千年前」の話はちゃんと説明した方がいいね(笑)。

松本 もともと音楽って、楽器も何もない時代から「獲物が捕れた!」って集まって宴をしたり、雨乞いのお祈りをしたり、たぶんみんなで歌っていたと思うんですよ。その感じってすごく純粋だし、いろいろ加わってないじゃないですか。音には目には見えないものがあると思うし。だからこそ音楽には正直に向き合わなければいけないと思ってるんですよね。

● つまり、「苦しいんだ、でもやるんだ!」っていうのも──。

藤原 素のまんまを出すっていうことですね。

● たとえばWANIMAを通して何かを克服しようとか、自己実現するとか、そういう意識ってありますか?

松本 もし自分が音楽をやっていなかったら、こんなふうに歌うことも歌詞を書くこともなかったので。もっと早い段階で心が折れていたと思うんですよ。歌うことで、それをお客さんが求めていることを知ることもできましたし。WANIMAのおかげで助かってますね、おれは。救われています。

● 自分の素のまんまの叫びが多くの人に受け入れられる、それは苦しい叫びほど感動的なことかもしれないですね。

松本 おれはそれがすごくうれしくて。でもまだまだ、もっと多くの人に、っていう気持ちはあります。言ってもまだごく一部じゃないですか。

藤原 もっと多くの人に響かせたいですね。

松本 「一億人の健ちゃん」になりたいですね (笑) 。

● バンドをやり始めたのは高校生の時ですよね。

松本 高校1年からやり始めました。

● 今回の歌詞ってたぶん、バンドをやり始める前の状況、それこそ子供のころのことも書かれていますよね。もし音楽をやっていなかったらとっくに心が折れていたということですが、以前はどんな状況だったんでしょうか。

松本 いわゆる普通の家庭ではなかったですね、おれと光真は。自分たちでどうこうできる問題でもなくて。でも、いろいろなタイミングでいろいろな人に助けられたので。周りの人たちに助けられた感じですね。

● 以前のインタビューでは、二人ともおじいちゃん子で、光真さんはよく松本さんの家に遊びに来ていて、松本さんよりも先にお風呂に入って晩ご飯を食べていた、ということを話してましたね。

松本 あまり裕福ではなかったですね。

● その頃、どんなことを感じながら生きていたか。

松本 なんて言えばいいんだろうな……。でもやっぱ、寂しさは常にあったような気がします。あとは、世の中のいろんな種類の人を幼い時から見てきたかもしれないです。なんていうか、幼い時には分からなかったことも、大きくなるにつれて分かったことも多くて。うまく言えないんですけど、一般的な家庭ではなかったから、周りが羨ましかったです。

● 西田さんも似た環境だった?

西田 ぼくも裕福ではなかったというか。やりたいことが何もできなかったですね。動ける範囲も決まっているし。ぼくの場合は小学校の時から複雑な事情が始まったんですけど、最初は周りの目がすごく嫌で、家の外に出たくなかったですね。そしたら、おじいちゃんとおばあちゃんが、そんなぼくを見て悲しんでて。その悲しんでいる様子を見て、自分は何をやっているんだろう、ぼくは長男なんだから支えていかないと、という気持ちに変わっていって。それからは自分から自分の環境をオープンにするようになりました。そしたら周りの人たちが手を差し伸べてくれるようになって。その有り難みに触れていくうちに、自分も周りに対して何かをしたいという気持ちが芽生えてきて。それで、自分がいちばん好きなものは音楽だから、音楽で家庭や周りを支えられたら、それほど幸せなことはないなと思って。そして思いきって東京に出てきました。まだ全然、途中なんですけど、どんどん目標に近づけていけたらと思っています。

● おそらくお二人はお互いの気持ちを共有していたと思いますが。松本さんが音楽をやり始めた経緯は?

松本 ずっと一緒にいたので、聴いてきた音楽もほぼ一緒だし。仲間内でそういう寂しさや苦しみを音楽にぶつけていた感じはありましたね。みんなで溜まり場に集まって音楽を聴いたり、真似て歌ったり。音楽をやってるときはそういう寂しさや悲しさを忘れられていた気がするんですけど。小さい街ならではの、みんなで溜まってワーワー言って、その間はすごく幸せな気分で。でもどこかには寂しさは残っていたりして。ただ、みんなと一緒におれば何とかなるんやないかなって気はしてましたね。

● 松本さんが先に一人で東京に出て、西田さんはその2年後に自衛隊を辞めて上京するわけですが。松本さんが上京しようと思ったのは?

松本 音楽をやるためですね。もともと熊本でやっていたHANIMAというバンドをずっとやりたかったんですけど、光真は自衛隊に入ることになったので。

● 熊本では寂しさを紛らわすために音楽をやっていたということですが、東京に出てきてからは?

松本 知り合いもいないし、電車の乗り方すら分からなかったくらいで。まずは環境に慣れることに必死でしたね。

● 西田さんが上京するまでずっと一人だった?

松本 そうですね。でも2年間ずっと光真を待っていたわけではなくて。新しくメンバーを探してバンドを作ろうと思っていましたから。でも、できず。で、どこかのタイミングで光真と「東京に出てくれば?」という話になって。それで音を合わせていたら──という流れなんですけど。まぁ、その2年間はつらかったですね。

Vol.02 へ続く...
Interview by indies issue 岩崎 一敬
Photo by Yuji Honda