「1Time」オフィシャルインタビュー掲載!!

UP

―――初のアコースティックミニアルバム『1Time』が完成しました。WANIMAにとってはかなり新鮮な作品になったと思いますが。

 

KENTA:セットリストの間にアコースティックのコーナーを演らせて頂いたり、今までのライブでも「いつか激しいライブができなくなったら、アコースティックの音源を出してアコースティックのツアーを周りたかね、やから恐れずともに歳を重ねていこう」といったニュアンスのMCをしたりしていたから、僕らの中ではこのアコースティック盤は「少し時間かかったけどお待たせしました」って。今まで通ってきた道に感謝を忘れずに「やっとお届け出来る」って感じがしています。

 

――今もツアー中だし、当然WANIMAは変わらずバリバリやっているわけですけど、今このタイミングでというのには意味はある?

 

KENTA:去年11月から新体制で、自分たちでやっていくっていう形になった中で、先ほども言ったように、「今まで通ってきた道にリスペクトを忘れず、ここから先は愛と情熱を持ってやっていく」ということです。今回曲順もデビュー作の「Can Not Behaved!!」の「HOME」から始まって、リリース順を追っていく形にしています。その中に新曲の「Feel」や、ライブのエンディングで流していた「Fresh Cheese Delivery」という曲を入れさせて頂きました。好きな曲を集めるだけじゃなくて、今まで通ってきた道に対してのリスペクトを忘れずに楽曲を並べました。「これを出そう」と決めて『Catch Up』のアルバムと並行してやっていたことやったから、周りの様子や反応を見て決めたとかではないです。

 

――いろいろ変わっての新しい第一歩というよりも、WANIMAのずっと続いてきた時間の中でできたもの、という。

 

KENTA:振り返りやこれからに向けてやらせて頂きました。

 

――でもそれこそ「THE FIRST TAKE」に出たり、こういう作品を出したり、今までとは違う形でWANIMAの音楽を届けていくということも増えている感じがするんですが。そのあたりはどういうモードなんですか?

 

KENTA:「THE FIRST TAKE」もだいぶ前からトライはしたいっていうのはメンバーの中でありました。『Catch Up』を出すのと並行して、前の曲たちを2024年バージョンで作り直したり、WANIMAを続けて動き回りたいと思っていました。偏見をなくしてバンドとしてもすごく柔軟に頭も体も動かしていかないといけない時期です。

 

――確かに、よくバンドがアコースティックやりますっていうと、ちょっと企画っぽいというか、飛び道具感が出るものだけど、これは思った以上にWANIMAっぽいなと思ったんですよね。すごく地続きなものなんだろうなと。

 

KENTA:ありがとうございます。ラジオやインスタライブでも何度も弾き語りを演らせて頂きました。音楽、歌を届ける為に弾き語りは空気感やニュアンスなど一番シンプルに響く気がしました。シンプルゆえに難しいから、バンドとは別物。でもそこの頭の切り替えを僕らは集中してきっちり演ると決めたから。次は、たとえば新しいCD出したら、その全曲をアコースティックで録り直すっていうのをやろうかなと思って、毎回。もう、「どっちか刺され」みたいな(笑)。労力と時間は無視して。それぐらい、アコースティックは好きです。

 

――KO-SHINくんとFUJIくんはアコースティック盤を出すぞっていうことになっていったときに、どんなことを思いました?

 

KO-SHIN:お客さんからもそういうのを出してくださいっていう声は多かった。それだけバンドと違う僕らを求めてくれました。アコースティックは難しいけれど、完成度を上げれると曲も届くし、こうやって音源にできたことで、また新しいWANIMA――というよりは、本来持っているWANIMAを届けられるというのはよかったなと思います。

 

FUJI:さっき小川さんもおっしゃったように、思った以上にWANIMAっていうところが僕もすごく強くて。もともと3人の中に流れていた音をそのまま表現できたなと思っています。アコースティックになっても違和感が全然ない。KENTAも言っていたようにいつかやってみたかった取り組みのひとつだったので、すんなり出せたなと思います。

 

――今回、5曲プラス新曲という形になっていますけど、たくさん曲がある中でこの曲たちを選んでいったっていうのは、何か理由があるんですか?

 

KENTA:さっき言ったように順を追っていっていう感じで、振り返った時に「これも出した、あの時はこんな伝え方をしたね」っていうのもあったし、今やっているツアーも52本周ってきたんですけど、誰も予想がつかないセットリストで挑戦させてもらっている。そういうセットリストを組みよる時から過去を振り返るタイミングがあったから、その中で選んで出させてもらいました。「Feel」はZOZOマリンスタジアムでの配信ライブ(「COMINATCHA!! TOUR FINAL」)の時にサプライズで流したんですけど、そこまで反響がなかったような……。(泣)

 

――そんなことなかったと思うけど(笑)。

 

KENTA:若干ヘコみながらライブした(笑)それは冗談ですけど、その後星野源さんの「オールナイトニッポン」で急遽1コーラスだけ歌わせていただいた時も「あ、『Feel』や」って何人か反応してくれたのを覚えています。「この曲、行き場ないけど伝えたいな」と思いました。今回はアコースティックのバージョンやけど、バンドサウンドでもいつかやりたい。自分たちの中では新しいトライやったし、いつもと違う色味の雰囲気を持った曲ですしコロナ禍での届けたい想いが詰まっとるからこのタイミングで出させていただこうと思いました。

 

――今回これが入るってなって、みんな喜んでるじゃないですか。「やっと聴ける」みたいな。

 

KENTA:そうだと嬉しいです。話変わるけど今回のジャケット、パチンコ屋の前で3人が演奏しとるけど、このパチンコ屋っていうのは、WANIMAを応援してくれてる人たちは知ってると思うけど、僕らがずっとバンド練習や、お客さんを呼んでライブをしてた場所。もともとはこのパチンコ屋さんの隣にある小さい建物が「さち」っていうスナックで、そこでバンド練習していました。で、このパチンコ屋さんが潰れることになって、パチンコ台とか全部出して、そこでバンド練習を始めました。だからここはWANIMAの原点です。原点の場所をジャケットにさせていただいて、曲の順番は今まで僕らがCDを出してきた順番になっています。それプラスで「Feel」という大事な曲を入れさせて頂きました。

 

――「Fresh Cheese Delivery」は?

 

KENTA:これはどこかのライブ合間でBGMのような曲を作ってみようと決めて、KO-SHINと俺で作りました。FUJIくんはこの曲にあんまり関与してくれてない。

 

FUJI:(笑)。

 

KENTA:さっきも「WANIMAらしいものになった」と言ってくれてましたが、客観的に聴いてくれている。俺らの中で試行錯誤して何度かトライしたから、そう聴こえるなら本望やし彼は僕らの良き理解者です。

 

――実際の制作はどうでしたか?

 

KENTA:「Catch Up」でバンドサウンドをやる合間でアコースティックもやっていたから、頭の切り分け方と集中力は重要課題でした。テーマのひとつにどの瞬間でも歌えるキー、どのタイミングでも聴きやすくしたいなと思っていました。自分も無理せずに心地いいキーで――もともとそれくらいのキーだったのに、自分の技術が足りなくて高いキーになりがちでした。おかげで高音はかなり強くなった。今回のアコースティックで低音の声の出し方や鳴らし方もより強くなりたいと思いました。昔からの仲間やまわりの人たちにアドバイスを受けながら進化できるように日々やりたいです。

 

――楽しみです。しかし『Catch Up』のレコーディング自体が相当タフだったわけじゃないですか。それと並行してこれをやっていたというのが驚きなんですけど。

 

KENTA:エンジニアさんと集中して演りました。メンバーは担当する楽器、カホンやギターに集中して気合いでやるんですけど、エンジニアさんは1人でずっとそれをやってたから、頭から湯気が出てました。そういういろんな方々の協力のもと作れたなぁって心底思います。

 

――「HOME」にしろ「Hey yo...」にしろ、一度曲として完成しているわけじゃないですか。それをもう一度作り直していくというのは大変ではなかったですか?

 

KENTA:「Hey yo...」の最初の部分、〈本音の話をする暇もないくらいやけど〜〉っていう箇所は、もともとCD音源には入っていないけど、ライブ限定でずっと演らせて頂いてました。そのライブでしか聴けないパートをいつか音源にも収めたいなって思っていました。音源に収めてもどんどんライブごとに進化していくし、僕が成長して変わり歳を重ねていくと歌いたいことや伝えたいことも変化していく。今2024年バージョンはいったんここで完成。今までのよさも忘れずに、最初に出した時の気持ちのままトライできたし、一貫して伝えたい気持ちを詰め込みました。ただガムシャラに激しさだけやったあの時とはまた違う、本来俺らが伝えたいニュアンスや熱量が、今回は一味違った形で伝わると良いなと思っています。

 

――その冒頭の音源になっていなかった部分を聴くと、より近く感じるんですよね。KENTAくんが思っていることやWANIMAが伝えようとしていることがよりリアルに伝わってくる感じがする。もしかしたらこういう形の方がWANIMAの素に近い部分なのかなとも思ったんですよね。

 

KENTA:そのつもりで毎回CDを出していたけど、なるべく挑戦も経験も胸にあるものが熱いまま耳元で鳴ってほしい。息継ぎから、言葉のちょっとしたニュアンスまで伝わってほしいって思っていたけど、なかなかそれがレコーディングでうまく出せないことが多かった。でもやっとそういうのを試せるようになったし、少しずつ出せている。意識して大事な部分を忘れずに積み重ねていきます。

 

――KO-SHINくんはこうやってリアレンジして作っていくという作業はどうでした?

 

KO-SHIN:WANIMAの曲は最初をたどるとギターと歌から作るから、この曲たちを作るにあたっても今までどおりの作業でした。あとはどれだけ、もとある曲たちが持っている力をよりよくできるかって集中した。余計なことはせず、シンプルに歌詞を届けるっていうことを考えてました。その結果しっかり届けられる曲に仕上げられたなっていうのは、アコースティックギターを弾いていても思いました。

 

KENTA:順を追ってレコーディングしたし、きっちり仲間たちやお客さんと歩んできたからこそ気持ちが乗るというか、思いを乗せようという気持ちになりました。今までの過程がなかったら気持ちも乗らんやったと思う。不思議と、作っていく中で曲を作った時の景色や温度を鮮明に思い出すことができた。「HOME」も「Hey yo...」も「For you」もそうやけど、歌詞を作っていた情景まで思い出すことができた。今回、このジャケットのパチンコ屋も、何もなかった頃から支えてくれた元メンバーや天草の仲間にお願いして当時を再現して映像を撮りました。その時に、「あの時から諦めずにここでやっていたから今に繋がっているんだろうな」と思ったし、東京出てからも何もなかった頃から支えてくれた人たち、仲間たちに対して、愛と情熱を持って忘れずに接していきたいなと改めて思いました。35歳になり、新体制にもなったけど、これは突発的なことじゃなくて、そこに向かうまでには時間もかかったし、ここから先もいろいろと時間がかかることもたくさんあると思います。でも一貫して、今まで通ってきた道にリスペクトを忘れんと、ここから先もWANIMAの音楽を変わらず信じて進化させて驚かせていきたいです。

 

――そのパチンコ屋で音楽やっていたころってどんな感じだったんですか?

 

KENTA:あの頃からわりとオリジナルの曲ばっかりやっていて。でも当時はとにかく悪さに走らんと音楽をやれたからよかったなと思います。治安があまりよくない町だったし、俺らも多少悪いことはしたけど、毎日わけもわからず音を出しとったから。近所のおばちゃんたちはあまりの爆音にイヤホンをしながらテレビを見よったと言っていたので、今思うとすごいことだなと思うんですけど(笑)。でも誰一人苦情を言いに来んやったし、いろんな人の支えで俺らは音楽をやれてたなって改めて思いました。過去曲をこのタイミングでアコースティックで出せたのは、すごく僕らにとって意味があります。

 

――さっきKO-SHINくんが言っていたように、WANIMAの曲を作っていくときはいつもギターと歌からなわけじゃないですか。そういう意味では曲の形としてもWANIMAの原点に近いものだったりするんですかね?

 

KENTA:最初はシンプルな形で、KO-SHINにギターを弾いてもらってイメージして作っていきます。その中で「こんな曲の構成で」っていうのを頭の中で組み立てながらKO-SHINにボソボソと伝えながら。俺にとってはその行程が重要でそこをミスると全部ミスってしまうことが多いから集中してやります。そこでよくなかったらよくないし、いいならいいって、2人の中でスパッと切れる瞬間でもあったりして。ギターを鳴らして歌うっていう時は幼馴染の腐れ縁の地獄みたいな時間が流れるけど、そんな中でもメロディと気持ちが繋がる瞬間があって、その時は共通言語投げまくりですんなり進む。なるべくそこに向かえるように自分がどうしたらいいか、どう頭の切り替えをしたらいいか、どう雑念を捨てられるかみたいなマインドの作り方みたいなのを、今はもう一歩先に行かないとなって2人で話しています。

 

――一歩先?

 

KENTA:切り替えがもっと早く、自分の中でわかりやすくできたらいいけど、イメージしたりいろんな感情が生まれるとその感情が邪魔する瞬間がある。「今ここは曲を作るタイミングですよ」っていう棲み分けみたいなのが、さらにアップグレード出来るように。ちょっとした些細なことが引っかかると、曲作りでもそれが邪魔してしまうから、KO-SHINとそこが歯がゆいねって話してました。自分への過信は捨てて追い求めていきたいです。

 

――そこまで自分で切り替えてやっていかないといけないというのは、KENTA くんにとってはどういうことなんですか?

 

KENTA:溜まり場のパチンコ屋も自分たちでパチンコ台を運び出して、ステージ作って全部自分たちで居場所を作っていたよなって。だから、今度はWANIMAっていう居場所を、今ライブに来てくれるお客さんともう一度作り直さんとなって思いました。もう一回、WANIMAって居場所を、自分たちがどうしたいかっていう意識を持って作り直して色んな切り替えをしながらシビアに日々捻り出しながらやっていきたいです。

 

――「居場所」という意味では、こういう作品があることでファンがWANIMAの音楽と一緒にいられる時間も増えそうですよね。

 

KENTA:ふとした瞬間――「ゆったりしているほうが売れるんじゃないか」みたいなよこしまな気持ちではなくて、島育ちの俺の中ではアコースティックのこの感じっていうのは自然に流れてたから、それをうまく音楽として表現できた。今後『1Time 2』を作るとか、これからもっとおもしろく、アコースティックっていうのを楽しめるかなって思うし、届ける振り幅が大きくなりました。自分にとってもWANIMAにとっても。

 

――なるほどね。この作品でWANIMAに出会う人ももしかしたらいるかもしれないですしね。

 

KENTA:ここから入って爆音WANIMAを聴いたら、ボーカル変わったと思うんじゃないかな(笑)。

 

――これ、作れてよかったですね。メンバーにとっては大変だったかもしれないけど。

 

KENTA:僕はベースっていうよりもボーカルなんです。中学で組んだfreedomっていうバンドの時からベースが抜けて、そこからずっとベースをやってるからベースボーカルなんやろうけど、でもボーカルだからアコースティックもバンドもわりと柔軟にできるというか。ただドラムのFUJIくんはずっとバンドで、パンクとかロックとかっていうジャンルに全身使ってたような人だったから、アコースティックはかなり苦戦はしてました。でも少しずつドラマーとしても新しいところに足を踏み入れていってる感じはしました。まあ、もうちょっとできますけどね。でもすごくドラマーとして成長できた1枚になっている気がします。

 

FUJI:この音源ではカホンを叩いていて、カホンって叩ける場所が限られてて、その中でKENTAの曲に対しての解釈だったり「こういう音を出してほしい」っていうのを3人で探しながら、「ここを叩いたらこういう音になるね」って。じゃあその音でこういうリズムだったら、っていうのを強弱で表現して。そういうことは今までドラムでもやってきたけど、より音数が少ない中で今回取り組めた。そういうところでは自分でも奏者としてレベルが一段階上がったかなって気はします。まだまだやれることはいっぱいあるなって。あとKENTAから急に鳴らすのが難しいカホンが支給されました(笑)。

 

――あえて難しいやつを?

 

KENTA:カホン奏者の方をレコーディングの時にお呼びした時に、鳴らし方と鳴り音に驚きました。楽器を鳴らすということの難しさにも改めて気づいたし、KO-SHINも同じギターではあるけど、エレキとは違うアコースティックギターの難しさもかなりあった。楽器が本来持っとる一番いい音をどう鳴らすかっていうのは、今後課題になってくるなって思ってます。歌もそうですけど、その曲に対してどういう体を使って声を出せるかっていうのは、一生の課題やから特訓を重ねながら。そこを楽しみながらやっていけたらなって思います。楽器が持ってる特徴をしっかり掴んで鳴らせる3人になったら、もっと場所関係なく、音楽にのめり込めると思うから。まだまだ旅は続きますね。

 

――この『1Time』をきっかけに、今までWANIMAの音楽が届ききっていなかった人にも届くといいなと思います。

 

KENTA:周りのバンドは20周年、25周年とか。WANIMAはドラムのFUJIくんが入ってデビューしてから約10年。まだ10年。甘やかすのもダメにするのも自分自身やと思うから弱音は心の引き出しにしまってまだまだ自分を奮い立たせてやっていきます。新曲もバリバリ作っているしライブも気合い入っとるからライブへ確かめに来て、ダメならベースへし折って下さい。

 

KO-SHIN:曲に対しての思いっていうのはもともとあるけど、「HOME」とかはバンドサウンドでやってる中でやっぱり「届いとるかな、ちゃんと聴き取れてるかな」っていうのはあった。でもこうやってアコースティックにすることによって単純に聴こえ方が変わる。歌詞の意味だったりも理解しながら聴けるんじゃないかなっていうのはすごくあります。「りんどう」もすごくシンプルなので、しっかり受け取ってほしいです。

 

FUJI:どれもWANIMAの曲にちゃんとなってる。入り口が変わることで、バンドサウンドだとうまく受け止められない人でも、こういう音だったら受け取れるよっていう人も中にはいると思う。そういう人たちにしっかり届いてほしいなっていうところはすごく強いです。WANIMAのよさが、ちゃんと自分たちが思ってるような形で届くんじゃないかなって思ってます。

 

 

文・小川智宏


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